私は、景吾よりも2つ年上だから・・・やっぱり私が良いとこ見せたいワケで。
それに、今年は景吾の中学を卒業する・・・・
「なぁ、。お前も出るだろ?俺の卒業式・・・・・」
for you.
「そつ・・・・ぎょうしき?」
景吾は、慣れた手つきで制服をハンガーにかける。
そんな手つきさえも、付き合って長いんだなと、実感した。
「でもさっ・・・こういうのって保護者が出るもんでしょ??私って部外者だし・・・」
「何言ってやがる。氷帝卒業生が後輩の卒業式に出たって誰も疑問に思いやしねぇよ」
景吾は、ハンガーにかけた制服をクローゼットの中にしまって、私の方を見る。
「それに・・・には来て欲しいんだよ。俺の晴れの舞台」
「え?」
「答辞すんの」
景吾は、ニッと笑って・・・・私の髪を撫でる。
そんな行為さえも、心地良くて。
「へぇー・・・・景吾、中学1年の時から目立ってて・・・凄いモテてたもんね」
私は、景吾から離れてソファに座る。
景吾は、私に来てほしいと思ってるから、誘ってくれてるのは分かってる。
だけど、素直に喜べない私がいて。
2つも年上なのに。
第2ボタンだって正直欲しかった。
景吾の事だから・・・・・他校の生徒とかにもきっと人気あるんだろうな。
そう思いながら、テーブルに置いてあったコップを手に持った。
その瞬間、景吾に手を捕まれて
「え・・・・・?」
私の手から、スルッと抜けたガラスのコップは、カシャンッと音を立てて、砕けていった。
「な・・・・・に・・・・?」
景吾を見ると、真剣な蒼い瞳で。
「良いから、来いよ」
私は、ただ頷くしかなかった。
「家まで送る。帰る準備しろよ」
−卒業式当日−
ざわめきがある氷帝学園の校舎。
私は、景吾と約束してしまい、約2年振りに氷帝に戻ってきた。
高校は、違う学校を選んで景吾と離れてしまうけれど。
『けいごー』
思いふけて、チョロチョロ歩いてたら、背後から声がした。
「え・・・・・・?」
「アン?どうした」
振り向けば、景吾がいて。
隣には、知らない女の子。
『今日で卒業だねー』
「そうだな」
『景吾と過ごした3年間・・・・ちょー面白かったよ』
そう笑顔で景吾に言う女の子。
なんなのよ。
私以外の女がいて、平気で学校生活送ってて。
こんなのが見たいだけに学校に来たワケじゃないのに。
私は、我慢できなくなって走って・・・・逃げた。
こんな自分が憎い。
いっつも逃げてばっかりで。
年上なのにっていつもプレッシャーかかってて。
「なんなのよっ・・・・・もぅっ・・・・」
満開の桜が舞う中、私は一度も景吾と顔を合わせる事なく・・・・・家に帰った。
* * * * * * * * * * * * *
あの日から、一ヶ月。
桜も咲き乱れ、私も新たな学年として・・・・進級した。
景吾と連絡を取らずに一ヶ月。
携帯に残る何件もの着信履歴に・・・そしてメール。
景吾からのメールや着信ばっかりで。
あの女の子と付き合ってるなら、連絡してほしくない。
「ねー・・・!!見てみて!超かっこいい男の人がうちの学校に来てるよ!」
「え?」
友人に、いきなり話かけられてビックリした。
周りの人がざわめいてる。
どうして、こんなにざわめいてたのに気づかなかったんだろう。
そう思って、友人が指さす方向を見てみた。
そこには、氷帝学園高等部の制服を着た・・・・・・・・・・・・・・・・
「忍足・・・・・・・侑士・・・・・・・」
「え!?知り合い!?」
「知り合いって言うか・・・中学の後輩なんだけど・・・」
そう。景吾と一緒にいた忍足侑士。
独特の関西弁で変な人だなぁーっと思ってたけど。
私は、違う人に用があるんだろうと、その場から離れた時、大きな声でこう呼ばれた。
「ー!!!頼むから出てきてくれへんかー!?」
振り返れば、女子生徒にもみくちゃにされてる忍足侑士。
私の名前をフルネームで呼ばれては、私が目立ってしまうので、急いで走って忍足侑士の手を引っ張った。
「あ・・・・・・・・?」
「はぁっ・・・はぁっ・・・・私の事・・・大声で呼ばないでくれる?」
忍足侑士は、ズレたメガネを戻して、笑顔でこう言った。
「あんな、あんさん3年から氷帝学園高等部の生徒やで?」
「・・・は?」
3年から氷帝学園???
私は、意味が分からず間抜けな顔をしていると忍足侑士は、「大丈夫かー?」と声をかけてきた。
「それってどういう意味?」
「あれ?跡部から聞いてあらへんの?」
「あ・・・・携帯に連絡はきてるんだけど・・・私が・・・出てないだけだから」
忍足は、驚いた顔で私を見る。
「なっ・・・・それウソやろ?跡部が・・・・・」
「だってさ・・・・景吾ってば私を卒業式に呼んでおきながら・・・他の女の子といるんだよ?おかしいよ・・・・」
こんな事言ってる自分が恥ずかしくて。
すっごく泣きたい。
「あー・・・・もしかして・・・テニス部のマネージャーじゃ・・・」
「そんなの知らないよ!!とにかく帰って・・・!私は・・・!」
「一つ言わせてもらうけど」
ガシッと掴まれた腕が痛くて。
「跡部が・・・・どんだけ・・・アンタの事心配してるのか分かってるん!?」
すっごい真剣な目で言われて。
景吾の事を一番に分かってる人なんだって・・・気づかされた。
「え・・・・・・・・・?」
「あんなぁ!跡部がすっごい心配してんねんで!?毎日電話も繋がらん言うて・・・俺に愛想つかしたんじゃないかって・・・めっさ泣きそうな顔してんねんで!?」
「景吾・・・・・が?」
「せや・・・・あんな跡部・・・・アンタの事思ってるから・・・・心配してんねんで・・・?」
今まで考えもしなかった。
景吾が、どれだけ私を心配して・・・・・泣きそうだなんて。
「景吾の・・・・ばかっ・・・・」
私は、学校の校門を出て、氷帝学園へ走って向かった。
ただ、景吾に会いたくて。
景吾を、目指して。
「ったく・・・・ホンマ、面倒なやっちゃ・・・・」
「はぁっ・・・・はぁっ・・・・」
もう、どれくらい走っただろう。
元々、体育会系の体をしてない私が走るのがおかしいよねっ・・・・
「っ・・・・」
呼吸が苦しくて。
息ができないくらい走ったんだって・・・自分で実感した。
「けっ・・・・ごっ・・・・」
目眩がして。
前が見えなくて。
ねぇ、景吾。
「会い・・・・・ったいっ・・・よぉ・・・・・・」
しょせん、自分はここまでなんだ。
すぐ諦める自分が大嫌いで。そんな時いつも手を差し伸べてくれたのは・・・・・・
「ったく・・・・おせぇんだよ」
「けぃ・・・・・ご?」
顔を上げれば、景吾がいて。
呼吸が乱れて肩で息をしていると、いきなり景吾に肩を捕まれた。
「心配・・・・・・・・・したんだからな・・・」
景吾が、俯いて私の肩に顔を埋める。
「景吾・・・・くすぐったいって・・・・」
「ヤダ」
「え・・・・・?」
「の呼吸が・・・・・気持ちい・・・・」
ぎゅっと力を込めて抱きしめられて。
「けっ・・・・ご?」
すっと景吾の綺麗な指が私の髪を撫でる。
「桜の花びら・・・ついてる」
「えっ・・・あっ・・・ありがと・・・」
景吾は、今まで離れてた分・・・それを埋める様なくらい、甘えてくる。
「あのさ・・・・景吾」
「ん?」
「忍足から聞いたんだけど・・・・泣きそうだったって本当?」
景吾の眉間のシワが増える。
あ、図星なんだ・・・・
「さぁな」
「なっ・・・・教えてよ!」
「嫌だ」
「そういう態度取るって事は・・・図星なんだ?」
「っ・・・あぁ!そうだよっ・・・うっせぇな・・・・文句あっかよ・・・」
景吾は、顔を真っ赤にして、そっぽを向く。
そんな貴方さえも愛しいから。
「景吾っ・・・・」
「あ?」
桜色の頬をした君へ。
「一ヶ月・・・遅れたけど・・・中学卒業おめでとう・・・それと・・・高校入学おめでとっ」
「ありがとよ。にやるよ。これ」
「え?」
そう言って景吾から渡されたのは、氷帝学園中等部の制服のボタンだった。
「、欲しかったんだろ?第2ボタン」
「なんで・・・・」
「俺は、女心なんて知らねぇけどよ。中学ン時の部活のマネージャーが、彼女にあげると、きっと喜ぶって言うから・・・・残しておいた」
「そっか・・・・・」
なんだ、ホントに勘違いだったんだ・・・・
「それと、」
景吾から、ズィっと渡されたのは、大きな紙袋。
「おもっ・・・・」
「氷帝学園高等部3年の制服。夏用に、冬用。全部揃ってる」
「えぇ!?」
「来いよ。俺と1年間だけでも・・・・一緒に高校生活・・・過ごそうぜ」
「でっ・・・でもっ・・・・」
「の親には、言ってある」
もっ・・・もう、そこまで手が回ってるんですか・・・・?
「学校側にも手続きした。学費は全て俺の家が払う」
「そんなの悪いよ・・・!」
氷帝は、私立で。私の通う学校は公立。
どう考えたって・・・・
「俺が18になるまで待って欲しい」
「え・・・・・・?」
「俺が、高校卒業して・・・自立できるようになったら・・・を本格的に嫁に迎い入れるつもりだ」
「ちょっ・・・それって・・・」
景吾は、サラっとこう言った。
「プロポーズってとこだな」
「恥ずかしっ・・・・」
しばらくは、この恥ずかしい台詞についていくのも良いかな・・・っと思う日々なのでした。
それから、景吾と高校生活を1年間一緒になるんだって思ったら凄く幸せだし・・・・。
私から、貴方へあげられるものは少ないけれど。
貴方が望む私の全てを、あげたいと思う。
これからの人生を、貴方と一緒に。
私から、貴方へ。
Fin
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春がテーマとの事で、卒業と入学(進学)を突っ込んでみました(笑)
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
そして微妙に季節が終わってしまったorz
渋澤景菜
2006.03.26
春うらら様にて書かせていただいた跡部夢でした。
再アップ:2006,06,10