こんなにも、君が好きだなんて。
黄昏、キス
チュンチュンと窓の外から聞こえる。
その音で目覚める私。
「だっるー・・・・」
私は、滅法朝が弱い。多分、一日の半分はテンションが低いくらい朝が嫌い。
私はモゾモゾしながら、携帯を探す。
そう、あの人からの電話をワンコールで出なくてはいけないために・・・・
〜〜♪
来た。アイツからの電話が。
ディスプレイを確認すれば、やっぱりヤツで・・・
「今日もワンコールで出てくるとはは暇人なヤツだな」
いかにも、何時間も前から起きていました〜の様な声の持ち主。
「アンタが、ワンコールで出なきゃ怒るから、こうやって出てやってんでしょ!」
そう、この声の持ち主は、跡部景吾。
俺様何様跡部様の跡部景吾。コイツは、自分が気に入らない事が起きると、何をするか分からない。
しかも、私は跡部とは、ただのクラスメイト。別に彼氏彼女の関係でも無ければ、つい最近まで喋った事も無かった。
なのに、何故か跡部は今から一ヶ月前に急に私に接近してきた。
電話番号教えろ〜だの、今日は暇か?アーン?とか。
「ハッ。まぁそうだがな。おい、。今日は放課後空けとけよ、大事な話がある」
「大事な・・・話?」
大事な話ってなんだろ・・・?
別に、アタシ・・・部活のマネージャーでもないしなぁ・・・って言う事は、アタシと跡部の事だよねぇ・・・?
「あぁ、大事な話。結構にとっても重要だぜ?とにかく、放課後空けとけ。じゃあな」
跡部は、用件だけを告げて電話を切ってしまった。
まぁいい。放課後になったら教えてくれるんだもんね。
私は、重い体を動かして、制服を着て、学校へ向かった。
* * * * * * * * * * * * *
「あ、だ」
そう言って、私に近づく・・・・
「向日岳人・・・」
そう、コイツは跡部の手下。
なんか知らないけど、跡部と関わる様になってから、テニス部のメンバーに何故か「」と呼ばれるようになってしまった。
跡部に文句を言ったら「あ゛ぁ!?」とか言って、不機嫌になった。
なんてゆーか、跡部もそれは知らなかったみたいで、他のメンバーが私の下の名前を呼び捨てにするのは気に食わなかったらしい。
別にさ、どう呼ぼうが勝手なんだけど。
「なぁなぁ、知ってるか、。跡部がー・・・」
ボーっとしていたら、向日が何かを言おうとしていた。
ただ、それはアイツの手によって押さえつけられた。
「アカンで、岳人。それは跡部から口止めされてたやろ?」
「あ、侑士ー。そうだっけ?俺寝ぼけてあんま覚えてねぇんだよなぁー」
「おはようさん、」
またもや、ややこしいヤツが揃う。
まぁ、向日からの言葉は気になったけど、どうせ放課後の内容だろうな、と思い軽くスルーしておこう。
「おはよう、忍足。悪いけど、私急ぐから。じゃっ」
私は走って自分の教室に向かう事にした。
長い時間関わってると、周りの人に勘違いされるし・・・ね
「あーぁ、行っちゃった。どうすんだよ侑士ぃー」
「まぁ、しょうがないんとちゃう?跡部は本気で・・・するみたいやし」
ダルイ授業を受けて、いつの間にか放課後になって。
なんだか凄く跡部の話が気になってきた。
指定された屋上へ足を進める途中、ハッと気づいた。
何で・・・・アタシ、跡部の事ばっか考えてんの?
跡部が接近してくるまでは・・・全然意識してなかったのに。
いつの間にか跡部が来て、気づけば毎朝跡部から電話が来て。
気づけば・・・・・・・跡部を妙に意識してて。
もしかして・・・・アタシ跡部が好きになっちゃったとか?
段々顔が赤くなってきて、これから跡部に会うっていうのに、顔が合わせられない。
どうしよう。
アタシ・・・いつの間にか跡部の事・・・・・
「おい、・・・そんなとこ突っ立ってないで、屋上来いよ」
「えっ・・・」
屋上の階段の一番上に跡部は立っていた。
私は、考え事をしていたせいか、屋上までの階段の一段目にいる。
こんなにも君との距離は遠かったっけ?
「ったく・・・とろい上にのろまだと手のつけようがないな」
そう言って私に近づく為に、一段ずつ階段を降りていく跡部。
屋上のドアは開けっ放しで、夕日が跡部の背後から眩しいくらい見える。
「ほら、来いよ。屋上で話すんだからよ」
そう言って私の手を掴む跡部。
触れた所は、暖かくて。全ての神経が、跡部に触れられたトコに集中する。
どうして、こんな事でドキドキしてるんだろう。
一段一段、屋上への階段を昇っていく。
ねぇ、跡部。屋上に着いたら、その手は離してしまうの?
「どうした?・・・・」
離さないで、その手を。
あと、残り一段なのに。
跡部が手を離すのを恐れてる私がいる。
ぎゅっと跡部の手を握れば、
「離さないから」
そう言って、私を屋上への最後の階段を昇らせた。
「跡部・・・・話って・・・」
きゅっと握られた、手はまだ繋いだまま。
夕日が眩しい。
「、今から言う事は確かな事で、冗談じゃねぇからな」
「え・・・・?」
すっ・・・っと跡部は目を閉じる。
そんな仕草にさえドキドキして。
「俺は・・・・の事が好きだ」
「えっ・・・」
「いつの間にか、意識してて。笑った顔とか・・・その・・・怒った声も好きだ」
跡部は照れてるのか、まだ目は閉じたままで。
「だから・・・・一ヶ月前にいきなり・・・?」
「あぁ。俺には後、タイムリミットまで・・・10時間なんだ」
「え・・・・?それって・・・」
死んじゃうの?
そう言おうとしたら、跡部は苦笑して
「バーカ。死なねぇよ。俺は生きてる」
「じゃっ・・・じゃぁ・・・」
「俺・・・・・留学する事にしたんだ」
握っていた手が、そっと離れた。
「じゃっ・・・・じゃぁ・・・!告白なんかっ・・・・しないでよっ・・・」
勝手に想いだけ告げられて。
告白されたと思ったら、跡部は留学しちゃって。
何で・・・・告白なんか・・・・
「帰ってくるのは、3年後。なぁ・・・・・・」
「アタシだって・・・・跡部がっ・・・いつの間にか好きだったのにっ・・・・」
「そんなの知ってる」
「じゃぁ何でっ・・・」
「3年後、まだ俺達が惹かれあうように、ココで会えたら・・・・・・・・・・
結婚を前提に付き合ってくれ」
どうして、君はいつも突然なんだろう。
突然近づいてきたと思えば、突然告白してきて。
「ねっ・・・・跡部っ・・・」
私は、うつむいたまま、跡部の袖をぎゅっと握り締める。
「3年後の・・・この時間に・・・ココで会おう」
そう言って、跡部は翌日から・・・学校に来なくなった。
* * * * * * * * * * * * *
あの日から3年。
私はいつものように、目が覚めた。
「あぁー・・・進路どうしよう・・・」
ただ、跡部からの電話は無い。
変わったと言えば、私は高校3年になった事くらい。
仲の良かった友達もいて、あのお騒がせなテニス部のメンバーもいる。
「なぁ、は進路決まったのかよ?」
向日は相変わらずピョコピョコ跳ぶ。
「そういう岳人かて・・・何も決まっとらんやん」
そんな他愛のない会話をして。
毎日笑って。
「あ、なぁ。今日放課後暇なんか?」
忍足が突然、真面目な質問をしてきた。
「いんや、今日はちょっと寄るトコあってねぇー」
「そか」
なんだかんだで、面白い毎日が過ぎていく。
そんな時間に逆らって、私は・・・・中等部の屋上へ向かう。
あの、約束を守るために。
久しぶりに、屋上に向かう。
あの日から、一回も屋上へ行かなかった。
でも、やっぱり屋上への階段は・・・あの日の思い出を思い出すから、昇れなくて。
「はぁ・・・やっぱ来てないよね・・・それに・・・」
階段を昇ってしまったら、跡部がいなかったら・・・
「帰ろうかな」
そう思って、今来た道を戻ろうとした時、
「誰が来てないって?何勝手に約束すっぽかしてんだよ?アーン?」
「えっ・・・!?」
振り向けば、3年前と同じように屋上までの階段の一番上にいる跡部。
「ハッ・・・3年前と同じシュチュエーションだとはな」
「跡部・・・・」
また、3年前と同じように、一段一段降りてくる跡部。
「ほら、来いよ」
挿し伸ばされた手は、あきらかに3年前と比べて大きい手のひら。
手を握れば、グィッと引っ張られて、バランスを崩しそうになる。
でも、跡部は支えてくれて。
一段一段昇っていく。
残り・・・・一段。
「、今度は自分で上がってこい」
スッ・・・と離された手
私だって、成長したんだから。
思い切って昇った先には、夕日の眩しい・・・・3年前と同じ風景。
「なぁ、」
跡部の言おうとする言葉を遮って。
「好きだよ。跡部の事が3年前からずっとこの先も」
「・・・」
跡部は自分が言いたかったセリフらしく、ちょっと不機嫌な顔になったけど
「俺も・・・好き」
互いに、目を閉じて
そっと唇を合わせれば
私達はまた、恋をする。
Fin
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「黄昏、キス」いかがでしたでしょうか?
かなりの長さになって申し訳ないです(苦笑)ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
SWEET LOVE・・・BITTER LOVE
渋澤景菜
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跡部夢オンリーサイトに書かせていただきました。
2006.12.15再UP。