いつも独りで、俺は何かと戦ってる。

金や名誉や金なんて、クソくらえで。


いつの間にか独りで。


俺の中身なんか、誰も知らない。

































寂しいね。


































俺は小さい頃から一人だった。
気づけば、「跡部様」と呼ばれ、何故か俺は・・・小さな支配者になった。
いや、それはなったんじゃない。周りが、そうしたんだ。


「跡部様っ・・・あのっ・・・」

「アン?」


女達は皆、顔を赤くして、俺を見つめる。
女は、皆・・・・俺の何を求める?


「お話がっ・・・」


”お話がっ”って、どうせ・・・告白だろ?


「めんどくせぇ、今ここで言え」

「えっ・・・そのっ・・・」


ほら、女はいざという時に弱いんだ。
俺は、こんな女いらない。


「悪ぃけど、付き合う気ねぇから」


金も、名誉も全て捨ててしまったら、俺には何が残るんだろうか。

その場を立ち去り、俺は帰る仕度をする。

何が・・・残る?
ハッ・・・俺は、俺だろ?

鞄を持ち、教室を出ると・・・そこには、また女達。
いい加減、俺は一人でいたいってのに。

どうして、こうも周りは、集まるのか。


「コラー!!跡部景吾!!」


デカイ声で、品の良さなんて・・・感じさせない女の声。
そして、俺を呼び捨てで呼ぶ女・・・思い当たるはずもなく、振り向くとそこには同じクラスの・・・名前なんか覚えちゃいねぇ


「跡部景吾!!お前、今日日直だろ!!」


女のくせして、お前とか・・・俺の名前を呼び捨てとか。
信じられなかった。


「お前・・・良い身分だな」

「は?」

「この俺様を呼び捨てや、お前呼ばわりする女は初めてだ」

「はぁ?」


思い出した。コイツは俺の席の隣の女。


「お前・・・名前は」

「つーかさ、アンタは私の事「お前」って呼んで良くて、私はアンタの事「お前」って呼んじゃダメなわけ?」


俺の話を・・・聞いてないのか?
しかも・・・俺の事を・・・アンタって・・・


「ククッ・・・」

「ちょ!笑ってないで、教室戻りなさいよ!アンタ日直なんだから!」

「あぁ・・・そうだな、お前と一緒にいると面白ぇし」

「お前って呼ばれる筋合いは無いっ」


ぎゅっと握られた俺の制服の袖は、なんだか可愛らしくて。


「じゃぁ・・・・名前教えろよ」

「・・・同じクラスなのに、覚えてないわけ!?」


驚いたような顔をして、俺の顔を見る。


「あぁ・・・だから、教えろよ」

「・・・

「下の名前は?」

「日直の仕事が終わったら教えてあげるからっ・・・さっさと教室戻るっ」


クィッと俺の制服の袖を引っ張って、スッ・・・と放す・・・の手。
なんだか、寂しくて。
俺は立ち止まる。


「・・・跡部景吾?」

「引っ張ってくんなきゃ、俺様は動かねぇぜ?」

「・・・・はぁ?」

「良いから、俺の制服の袖持って引っ張れよ」

「何言っちゃってんの」


ホント、俺何言ってんだろうな。
笑っちまうよな。完璧なる”跡部様”がこんな事言うなんて。


「早く。なんなら、手握ってやってもいいぜ?」


は、少し悩んでいるのか、黙ってしまった。
俺と手を握るのが嫌なのか?


「手は、嫌。跡部景吾って女遊び激しいって聞いたし。そんな汚れた手で触って欲しくないし。それだったら袖引っ張った方がマシ」


は、そう言って・・・俺の袖を引っ張る。
ハッ・・・俺が女遊びが激しいか・・・・まぁ、そう思われてもおかしくないな。

俺の過去が勝手に一人歩きしてるだけだしな。


「女遊びが激しいなんて、噂かもしれねぇぜ?」

「そんなの分かんないじゃん」


俺は、の歩幅に合わせて歩いて。
時々触れる、の指が冷たくて。


「なぁ」

「何」

「日直の仕事って何すんだよ」

「日誌書く」

「それだけか?」

「うん」


なんだ、それだけなのか。


「跡部景吾は日誌書くだけで良い」

「あ?」

「だから、他の仕事は私がやるっつってんの。どうせ、早く帰りたいんでしょ?」

「ハッ・・・なんだよ、それ」


笑っちまうよな。
俺は、をもっと知りたいって思ったばっかりなのに、早く帰れだなんて


「また・・・俺だけ特別扱いかよ?」

「また?」

「なんだよっ・・・・お前も、”跡部様”って呼ぶのか?」

「何言ってんの・・・?」

「うるせぇ」


俺は自分から、から離れ、教室に向かった。
ほら、また俺は独り。

は、遅れて教室に戻ってきた。

教室には、俺とだけで。


「跡部さっ・・・何が言いたいのか知らないけど!!私は別に、跡部は跡部だし、”跡部様”なんて呼ぶつもりなんか無いんだからっ」


息が上がってるのか、話すのは途切れ途切れで。
でも、何故かどこかで嬉しい気持ちもあって。


「嫌だったんだ」


コイツになら、話しても良いから


「いつの間にか、跡部様って呼ばれて、金と名誉と顔で近づく女が」


俺の中身なんか誰も分かっちゃいねぇ


「そんなのっ・・・私には知らないしっ」

「・・・・」

「跡部が、何思ってんのか知らないけどさっ・・・・そんなの、上辺だけの跡部を好きになった女なんか・・・断っちゃえば良いじゃん」

「・・・?」

「そりゃぁ・・・跡部のホントの気持ちなんて知らないわよっ・・・ただ、私が言える事は・・・」


ヤバイ、俺・・・・今のの言葉を言われたら、泣いてしまうかもしれねぇ。
天下の跡部様が、女に泣かされる?ありえねぇ・・・


「周りのせいにしてる、跡部がっ・・・寂しい人間だって事・・・」

「・・・っ」


本当は、分かってた。


「跡部は・・・・寂しい人間だよ」

「うるせぇ」

「周りに、押し流されない跡部でいて」


「・・・・・・え?」




「跡部は、跡部自身が・・・・作れば良いじゃん。周りの理想通りに・・・ならないで」





「なっ・・・何よっ」









「”景吾”って呼べよ」








「何それっ関係ないじゃっ・・・」


「良いから、呼べよ」









「けっ・・・・・・・景吾」







「ハハッ・・・本当に呼びやがった」


顔を真っ赤にして、怒るは面白くて。


「アンタが呼べって言うから呼んだだけでしょ!!」


「いや、それでいいぜ。今度から、そう呼べよ」


「はぁ!?」





親にしか呼ばれた事の無い、特別な呼び方をお前にやるよ。

爺にも呼ばれた事ないんだぜ?


”景吾”ってな。



大丈夫、俺はもう寂しくなんかない。
俺には、もうがいるから。






「そういえば」

「今度は何!?」

「下の名前、教えろよ」


「・・・・


「ふーん・・・・・・・ねぇ」

「何よ!?」


「可愛い名前じゃねぇか」

「あっ・・・・ありがと・・・」


名前もかわいいけどな、


顔を真っ赤にして、俺を見る顔の方が・・・・は可愛いぜ?
































Fin

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跡部ですよ(相変わらず
ってゆーか、久しぶりに書いたと思ったら、どうやら・・・暗い・・・ですねorz
跡部は、一人で何もかも抱え込んじゃいそうな気がするんですよ。
でも、そんな寂しい気持ちを渋澤が癒してあげるよ!みたいな(は
跡部がラビュなんで(ぁ
渋澤の旦那は、景吾と和樹と優と龍二と工なんで!(ウゼェww

2006.07.01