熱で溶けて。
私の涙
A snowy flower
「・・・・・別れよ」
私から跡部に別れを切り出した。
別にどうってことの無い原因。
それは浮気
私は何度か跡部の浮気現場を、生で何回も見たことがある。
何度か「どうして浮気するの?」と聞いても「遊び」としか答えなかった。
でも、私が今まで腕を組んで楽しそうに笑って歩いてるだけ。
ただ。今まではそれまでしか見たことは無かった。
でも、今回は違った。
夜、私は母親にたのまれた物をコンビニまで歩いている途中、跡部がコンビニの前で女と喋っていた。
まだそこ頃は寒くて、跡部はいつも買ってる、ブラックコーヒーを持っていた。
私は、跡部の存在を無視してコンビニの中に入ろうとドアを開けた時、女が喋っのを聞いて、頭が真っ白になった。
”ねーねー。いつもみたいにそのコーヒー私にキスしてちょーだい!”
キスしてちょうだい・・・
私が知らない所で跡部は彼女がいるのに平気でキスして、平気で他の女を抱いてるんだとその時、初めて分かった。
それだけではなく、跡部は私に気付いていないのか、更に私を落とす様に言った。
”いいぜ。”
ただ一言なのに。
もう、頭では分かっていたはずなのに。
どうしてこんなに私は悲しいんだろう。
浮気なんてしょっちゅうだから悲しくないはずなのに。
心のどこかで、私は跡部を信用していたのかもしれない。
今思えば、確かに跡部は、私を置いてどこかに行っていた。
初めてのデートだってやっと部活が休みになったのに、約束の10分前になっていきなりのドタキャン。
家の用事とか。
でもその時はすっごくショックだったけど、家の用事なら仕方ないと思ってそのまま家に帰った。
母親には「友達と買い物」と言っていた。
帰ってきて「・・・どうしたの?」って聞かれた。
ちょっぴり泣きそうになったけど、「友達が親に留守番してないさいって言われたから無理って電話来た」
その一言で終らせていた。
私は私服に着替え、母親に頼まれた買い物をしてる途中、あの跡部はファミレスで女の人と楽しそうに笑っていた。
その時から私は跡部があんまり信用出来なくなった。
次の日、跡部は何事も無かった様に、学校へ来た。
私は跡部に「昨日の女の人誰?」と聞くと跡部はめんどくさそうに言った。
「遊び相手」
初めてのデート、貴方は家の用事と言って断ったくせに、他の女と遊んでいた。
そんな結果を私に突き出した跡部は教室を出て行った。
その日、ずっと教室から跡部の姿は消えていた。
少し気になって何度も電話した。
何度電話をしても、機械音の留守番電話。
決して繋がる事は無かった。
それから月日が経って、付き合い始めてから1年。
浮気は絶える事なく続いたけど、慣れてしまった。
「ねー跡部。私たち、今度の土曜で、付き合い始めて1年だよ」
「何だよ・・・で?」
「暇?」
「あぁ・・・どこか行くか・・・」
「うん!」
「は何処行きたい?」
「う〜ん・・・・どこでもいいや。」
「まぁいい・・・駅前の時計台で10時な」
ただ、貴方の傍に居たくて。
ずっと楽しみにしていたのに。
土曜になり、約束の場所へ5分前に着いた。
その日は物凄く寒くて、私はマフラーをしていた。
ちょっぴりお洒落をして。
服に似合うマフラーが赤いのしかなくて暖かければいいと思い、つけていた。
10時になったけれど、跡部の姿は一向に現れない。
もう少し待ってみようと思い1時間待った。
ずっとずっと待っていたのに、あの人は現れなかった。
空は真っ暗になり、私はもう遅いので帰ろうとした時、私のマフラーの糸が人のボタンに絡まってしまったらしく、声をかけられた。
「あのー・・・」
私は絡まっていた事に気付かず、声のする方を振り向いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
跡部がいた。隣に女を連れて。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何してるの・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「悪ぃ・・・・忘れてた・・・・・・・・」
私は貴方にとってそれだけのものでしたない。
何十人中の1人でしかない。ただの女。
赤い毛糸で結ばれた私と跡部の服。
もう少しこの距離を離したら、この糸は切れる?
今、ハサミがあるのなら、今すぐ切り離して貴方から離れたい。
心の奥底で、跡部への信頼や、色々なものが音を立てて崩れ落ちた。
私はマフラーを取り、跡部に渡して走って帰った。
何もかもが、崩れた。
あの、跡部の一言。
忘れたで片付けられた。
私は跡部の心の片隅にも置いてもらえない。
もう・・・・・・・・・ダメなんだ。
家に帰り、跡部から貰ったもの全てをゴミ箱に投げ込み、私は一晩中、ご飯も食べずに泣いて疲れて寝てしまった。
* * * * * *
別れてから一週間。
私と跡部との接点はなくなり、付き合っていた事さえ忘れかけていた時、鳳君からメールが来た。
”先輩。最近跡部先輩の機嫌が悪いみたいなんですけど、どうかしました?”
別に私と別れたから機嫌が悪いんじゃない。
あの人は、平気で私の約束を破るんだから。
”分かんない。だって私達別れたし”
そう返信して私は学校へ向かった。
「〜ッ!!」
いきなり声がして振り向くと、猛ダッシュで走る侑士がいた。
「どうしたの?」
「跡部と・・・別れたって本当なん?嘘やろ?」
「本当だよ?」
「・・・せやから機嫌悪いねん・・・・」
「やり直す気はないよ」
「何で・・・」
「・・・・だって・・・・・どうやっても跡部は振り向いてくれないんだもん・・・」
「ペアリング買うくらいまでの仲やったのに?」
「・・・・1回もつけたトコ見たことない・・・・し。きっと捨てちゃったんじゃない?私も結構前に処分しちゃったし。」
「な・・・・」
「もう・・・・疲れちゃったの」
私がそう笑うと侑士は、悲しそうな顔をした。
どうして?侑士が悲しむ必要はないじゃない。
「何や・・・・映画見たいな別れ方やんか・・・・・・・・お前・・・跡部のロッカー見た事あらへんの?」
「1回も部室入ったことない」
「・・・・・・そか・・・・・・・」
跡部は1回も入れてくれなかった。
どんなにワガママを言っても。
* * * * * *
次の日、私は教室で半分寝かけていると、クラスの子に”跡部君が呼んでるよ”と言われた。
授業が始まる3分前。
私は教室のドアを開けて廊下に出た。
「よ・・・」
「何か用?」
「別に・・・・」
そう言って跡部は廊下を歩いて階段まで行った。
「ついて来いよ」
ただそれだけを言って。
* * * * * *
授業のチャイムが鳴った。
だけど、私と跡部は、無言でただ歩いていた。
「靴に履き替えてこいよ」
私は無言で下駄箱に向かい、靴に履き替えた。
昇降口を出てそこに舞い降りているのは、
春に近いこの季節なのに。
季節はずれの雪が舞い降りていた。
「・・・・・今年最初の雪だな」
跡部は白い息を吐き出しながた傘を持って歩き出した。
「・・・こっち来いよ」
愛々傘をする形で歩き出す。
彼女の時じゃなかったらこんなのしてくれなかった。
「・・・・・もう1回・・・・やり直さねーか?」
少しずつ降り積もって行く雪。
「・・・どうして?」
「・・・・お前がいねぇと・・・・・落ち着かないんだ・・・・・」
「他の女の人がいっぱいいるのにね。」
「・・・・・」
跡部は無言で自分のブレザーから携帯を取り出してこう言った。
「知ってるか?携帯ってのは電池パックが濡れると壊れるの」
「え・・・?」
そう言って跡部は携帯の電池パックを取り出し、雪が降り積もる上に投げ捨てた。
「・・・・これでもう連絡も取れネェ・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・もう一回言う。俺と付き合い直してくれ。」
「・・・・・・ぅん・・・・・・」
今まで見たことのない、真剣な目で私を見つめて。
寒くてしょうがなくて。
でも。
今は跡部が抱きしめてくれてる。
「ペアリング・・・・・捨てちゃった・・・・・・・」
「んなの・・・・また作ればいいだろ・・・」
私の頬を伝って流れる涙。
落ちた涙は、
雪の地面に落ち、
過去の思い出と共に溶けていった。
新たな思い出と共に、
確かめ合うように、私たちは
白い雪の中、
口付けあった。
fin...................
・・・・これを書くのに2時間・・・・・企画夢第一弾という事でながったらしくなってしまいました・・・・
気合入りまくって・・・
ねぇ・・・・(苦笑
どうよ。跡部夢。
ってか鋼錬始まっちゃったし!!(ガビーン)
諏訪部を見るために今日は退散です(何)
シリアス風味で書いてみました。。。。