「おっ・・・・おおおお忍足君!?」



「えぇから、ついて来い」



何故か、朝からいきなり忍足君に呼び出されて、腕を引っ張られて忍足君に引きずられている私。
忍足君とは、幼馴染だけど全然喋った事もないし、遊んだ事も私の記憶の中では片手で数えられる程。
そんな忍足君に引っ張られてる私って一体・・・・・













ウソ、イツワリ、オネガイ、一日彼女。



















「忍足くっ・・・・・・・」


女子からの痛い棘のある視線。
そして、引っ張られる事によって手首が痛い。


「このくらいで・・・えぇか」

「あのっ・・・いきなり何ですか・・・・?」


「あのな・・・にお願いがあるんやけど」

「へ?」











「今日一日だけ、俺の彼女になってくれへん?」










「はっ・・・・はいいいいっんぐっ」

しまった、大きい声を出してしまった。
いきなり、忍足君の大きな手で塞がれてしまった。


「静かにせぇ・・・・な?。幼馴染のお願いやと思って・・・な?」

「ぷはぁっ・・・そっ・・・そんなの無理だって!」

「なんでなん?」

「だって・・・その・・・・私、忍足君と全然喋った事ないし・・・」

「えぇから。は俺の話に、うんうん頷いてればえぇねん」

「それはちょっと・・・」

「はぁ・・・」

「それに、なんでそんな事・・・」

「理由、知りたいん?」


「そりゃぁ・・・まぁ・・・」




「んー・・・じゃぁ、理由教えたら今日一日俺の彼女になるん?」




「なっ・・・・・それとこれは関係ないでしょっ」


「ギブ・アンド・テイクってやっちゃ。どないするん?」



なんか、そんな言い方されると、どうも気になってしまう。
忍足君は、それを知ってか知らずか、どうも私もその手にのってしまう。



「分かったから・・・・理由教えて欲しいです」


「ほら、今日バレンタインやろ?」

「そういえば・・・」

「俺、あんまり甘いもん好きやないねん。」

「そっ・・・そうだったんだ」

「んで、ほら。女の子ってどうも理由がなきゃ断るなぁーっちゅーねん」

「だったら、甘いもの好きじゃないって言えば・・・」

「そんなんやったら、無理してでも受け取ってって言われるやん」

「はぁ・・・」

「せやから、彼女おるから無理って言えば、女の子も諦めると思うねん」

「それって、私に被害が・・・」



は俺が守ったる。そこまで出来ない男じゃあらへんで」

「しょっ・・・しょうがないなぁ・・・・」


私が、認めると忍足君は急に私の腕を掴んだ。

「!?」

「それと・・・・ココ、赤くなってしもうたな。・・・堪忍な」


忍足君は、赤くなった私の腕をペロッと舐め始めた。




くちゅっ・・・・




「ちょっ・・・・やめっ・・・・・・・!」


きっと、私は顔が真っ赤だと思う。


「なんや・・・顔真っ赤やん。まぁ、これくらいせな彼氏彼女に見えんし?」

「そういう問題じゃないでしょっ・・・・」

「まぁえぇ。ほな、休み時間、昼休み、放課後・・・とにかく、2人でずーっと今日は一緒な」

「わっ・・・・分かった」

「ほな・・・・教室行こか」


そう言ってまた掴まれる手首。
今度は、さっきよりも優しい握りで。


































「忍足くーん」


また、見知らぬ女の人が忍足君を呼ぶ。
断然、今日一日は彼氏彼女を演じなくてはならないので、忍足君は私の前の席に座り、私の方を見ている。

「またか・・・・」


忍足君は、呆れた様にため息をつく。
そして、忍足君は私の腕を掴んで女の子の方へ行く。


「おっ・・・忍足君!?」

「えぇから。は黙ってついてき」

「うん・・・・」


忍足君は見知らぬ女の子に笑顔で答えた

「俺に何か用なん?」

「あっ・・・うん。そうなんだけど・・・・隣の人・・・誰?」


見知らぬ女の子は私をキッと睨みつける。
こっ・・・・怖いなぁ・・・


「あぁ、俺の彼女やけど?何か問題でも?」

「何で一緒についてきてんの?」

「そら・・・・彼女やし?俺が、一時も離れたないねん」

「そっ・・・そうなんだ・・・・あ、このチョコ、受け取って!」


そう言って、チョコを差し出す女の子。
なんだか、手作り感が出てて上手だなぁーとか思ってたら、いきなり忍足君に抱きしめられた。


「うゎぁ!?」

「あー・・・堪忍な。俺、今彼女を抱きしめるのに両手いっぱいなんや。せやから、チョコ受け取る手があらへんなー」

「なっ・・・・」


私は、忍足君の腕の中にスッポリ入ってしまい、そして自分の心臓がうるさい事に気づいた。


「なっ・・・それってマジ!?忍足君!!」

「マジやから、抱きしめてるんやけど?」

「つっ・・・・そっか・・・ごめんね・・・」


そう言って女の子は、去って行ってしまった。
多分、泣いてたと思う。


「ちょっ・・・忍足君・・・・くるしっ・・・」


「あっ・・・あぁ・・・堪忍な・・・」


やっと開放された私は、忍足君に抱きしめられて苦しくて息があがっているのか、心臓がドキドキして息が上がっているのか、分からなかった。





教室に戻ろうと、私が教室のドアを開けると、教室中の視線が私に集まった。
そりゃそうだ。いきなり忍足君が私を彼女ーとか言ってるんだもの。

ずっと、女の噂がなかった忍足君が。





「なぁ、

「へ?何?忍足君」

「幼馴染やのに、しかもタメやのに・・・なんで苗字で呼んでるん?」

「そっ・・・そんなに親しくないし・・・」

「せやけど、今は彼氏彼女やで?」

「そっ・・・そうかもしれないけど・・・いきなり変えろって言われても・・・」

「侑士、呼んでみぃ」

「えっ・・・!?」


いきなり、そんな事言われても・・・!困るって・・・!


「えぇから。ゆ・う・し。はい。リピートアフターミー」

「ゆっ・・・・侑士・・・・君」


やっぱり、名前で呼ぶのはすっごく恥ずかしい。


「あんなぁ・・・・小学生かっちゅーねん」

「いやっ・・・ってゆーか・・・いきなり呼び捨てはちょっと・・・・」

「俺は、全然平気やで。

「うぅー・・・・考えてみます」

「ほな、じゃぁ侑士君でえぇや」

「うっ・・・うん」

「これから、呼び捨てにさせりゃぁえぇしな」

「え?」


これから・・・?それってどういう・・・


「何でもあらへん。ほな、屋上行こか」

「あっ・・・うん」



忍足君の隣で歩く私。
こんなの、全然考えたことがなかった。

忍足君にしてみれば、ただの一日彼女かもしれないけど・・・・
何故だか、私は忍足君を意識しはじめていた。


































「なぁ」

「はい?」

は、誰かにチョコ渡したりせんの?」

「あぁー・・・・いないなぁ・・・」

「そうなん?いそうな気したんやけどな」

「いたら、侑士君のお願い、聞かないよ」


私が苦笑しながら、お昼のチョコレートパンを食べていると、侑士君がいきなり私の顔に手を伸ばした。


「なっ・・・・・何!?!?」

「そんなビビんなや(笑)口元のチョコついとる・・・」


綺麗な指で、口元についたチョコを取る侑士君。
どうしよう。すっごくドキドキしてる。


「ん、チョコ」


ボーっとしていると、侑士君の手についたチョコを私の顔にずいっと突き出す。


「俺、好きやないから、が舐めぇ」

「えぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇえ!?」


「ははっ・・・・冗談」


忍足君は、すっごい笑顔で自分の手についたチョコを舐める。
なんだろう。すごい久しぶりに忍足君の笑顔を見た気がする。


「あー・・・・なんや、今年のバレンタインに一番最初に口にしたチョコがチョコクリームやったとわなぁ・・・・」


「そっ・・・それは侑士君が勝手に・・・!」


「なぁ


「なっ・・・・何・・・」


「チョコ、甘いなぁ」


「そっ・・・・そうだね」


なんだろう。こんな恥ずかしい雰囲気。


「なぁ


「今度は・・・何・・・・」


「キス・・・・してえぇ?」



ずいっと顔が近づく。

え・・・・・・・・・・・・・?









キ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ス・・・・・・・・・・・?


















「俺、ホンマはからのチョコが欲しかったんやけど」

「ウソツキ」

「ホントやって」


忍足君はクスクス笑いながら、私の髪を触る。
全神経が髪に集中している。


「ほら、俺ら幼馴染やん?ずっと・・・好きやった。」


「なんで・・・・・」



「ホントは、を今日中に惚れさせて、から告白させるつもりやったんやけどな」



私から・・・・?



「せやけど、そんなせこい手使いたないねん」




ずるいよ。忍足君。
私、もう忍足君に・・・・・・・






「俺、が好きや。甘いもん好きやない。せやけど、からのチョコならよろこんで受け取ったる」





「でも、私チョコなんか・・・・」









”チョコなんか持ってない”
そう言おうとしたら、忍足君の顔が近くて、目があって。

気づけば、私と忍足君はキスをしていた。









「っ・・・・からの口の中に入ったチョコ受け取ったわ」


「なっ・・・・」




クスッと笑って、忍足君は再び口付ける。

今度は、触れるだけのキス。









「嘘、偽りなんかやないで。好きやねん」



「っ・・・」








「一日だけの彼女やなくて・・・・・ずっとずっと・・・一年も十年も百年も・・・・俺だけのでおってくれませんか?」



























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渋澤さん史上最強に顔がニヤけます(ぇ
一応、あとがき書く前に読み直しをするんですが、もうダメだ。
侑士、恥ずかしい台詞多すぎです・・・・・!(殴
「俺だけのでおってくれませんか?」
なんて、プロポーズしてんじゃないよ!!(暴れる)
もう、スピードワゴンの「あまーい!あますぎるよ!忍足さん!」と言ってやりたい(ぇ
しかも、侑士が微妙にエロイ・・・(ぁ
すっ・・・すみませっ・・・・(ぁぅ
とにかく、バレンタイン2位おめでとう!w

2006.02.12