君の声が・・・聞こえる。






















君の声を探そう。




















さん、卒業式の事なんだけれど、ちょっと良いかしら?」

「あ・・・・はい・・・」


たまたま、私はピアノが人並みよりも弾けるらしく、良く先生にピアノの伴奏を頼まれていた。
どうせ、そんな事だろうなぁーとか思いながら先生に近づく。


「多分、分かってると思うんだけど・・・」

「ピアノの事、ですよね」


先生は小さく頷くと「毎回ごめんなさいね」と申し訳なさそうに言われた。


「別に、良いですよ。ピアノ弾くの好きですし・・・」


別に嫌じゃないから、私は快く引き受けた。


次の日、渡された卒業式の資料を見ながら、弾く曲の楽譜を音楽準備室から出す。


「えっと・・・・これ、どこにあるんだっけ・・・」


帰宅部だから、良くここの音楽室には足を運ぶからだいたいの場所は分かる。


「げ・・・・かなり高いトコロにあるじゃん・・・」


私が一番練習しなきゃいけない曲の楽譜が・・・一番高い棚のトコロにある。


「コレが、欲しいん?」


いきなり私の後ろから手が伸びてきて、欲しかった楽譜が私の所に下りてきた。


「おし・・・たりくん・・・?」

「ちょっと榊監督に用があって音楽室に来たんやけど、困っとるお嬢さんがおったから手助けしてみました」


クスッと笑って、はい、と楽譜を渡された。


「あ・・・・ありがとう・・・」

「そういえば、っていつもピアノ弾いてた様な気がするんやけど・・・歌とか唄わないん?」


忍足君は、近くにあった椅子に座って私を見る。
私は、忍足君に取ってもらった楽譜を抱きしめる。


「え?あぁー・・・歌は唄うよ。合唱曲とか弾く時、歌に合わせて弾かなきゃいけないから自分で唄いながら弾いてるの」

「へぇ・・・・俺、の歌声って聞いた事ないから、聞いてみたいわ」


からかうように笑う忍足君は、やっぱあの有名なテニス部に所属するだけあって、すっごくかっこよかった。


「なっ・・・何言ってんの!?そんなの唄うわけないじゃんっ」

「えぇー・・・いいやん」

「だめっ・・・・無理っ」

「・・・・なら、それはしょうがないな。あ、もしかして今から練習するつもりやったん?」


あれ?すんなり引いて・・・・


「そう、だけど・・・?」

「それはお邪魔しました」


椅子から立ち上がると、忍足君はスタスタと歩いて音楽室から出て行ってしまった。


「なっ・・・・なんだった・・・んだろう・・・」


まるで、忍足君と喋ったのは夢みたいだった。
だって、今日初めて喋ったし・・・それに、同級生だけど名前なんて覚えてないと思った。


「きっと夢だったんだ・・・。よし、練習始めよう」



〜♪

「白い光のなぁーかにー・・・山なみは萌えてー・・・」


音楽室に響く、ピアノの音と私の声。


「遥かな空の果てまでもー君は飛び立つー・・・」

「限りなく青いー空にー心震わせー」


・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


「あ、なんや、演奏止めてもうたん?」


ドアの向こうには、忍足君がいた。


の歌声、初めて聞いたけどめっちゃ上手いやん」

「なんで・・・」

「聞きたかったから」


ニッコリ微笑んで、いつも忍足君が音楽の授業中に座っている席に忍足君が座る。


「な、早く弾いてや」

「えっ・・・でも・・・」

「俺が歌うから」

「あ・・・・・うん・・・」


私がピアノを弾き始めると、忍足君は綺麗な歌声で歌い始めた。


「懐かしい友の声 ふとよみがえる」


ねぇ、君は


「心通った嬉しさに 抱き合った日よ」


何を思って、この歌を唄うの?


「・・・どうしたん?・・・」


ふと気づけば、手が止まっていた私


「あっ・・・ごめ、ん・・・」

「・・・な、この旅立ちの日にって曲・・・元は荒れてた学校の校長が作ったらしいで」

「そう、なんだ・・・」


知らなかった。


「・・・・もうすぐ、卒業なんやな・・・」


ふと、忍足君は窓の外を見た。
私も視線を追って、窓の外を見る。


「桜、きっと咲かないやろな」

「寒いもんね・・・」

「桜舞う中で卒業・・・ってのが俺のイメージやったんやけどなぁ・・・」

「なんだ、それ」

「あ、今変なヤツ、とか思って笑ったやろー・・・ま、他にも色々あるねん」

「どんなの?」

「好きな人と桜を見て、「ネクタイ下さい」って言われて、俺がネクタイ渡して、その中でキスってのもえぇなって思うねん」


苦笑いして、髪をかきあげる忍足君。


「あははっ・・・なんか、女のコみたいだね。でも、中等部を卒業なだけなんだから・・・高等部だって一緒の仲間じゃん?」

「ロマチックやろー。ま、それもそうやな」


お互い、クスクス笑って無意識に目線を合わせてしまった。

どうしよう・・・・恥ずか、・・・しい・・・


「・・・ピアノ、頑張ってな」


そう言って、忍足君は音楽室を去って行った。


放課後の音楽室からは、その日以降卒業式前日まで忍足君の歌声と私の弾くピアノの音だけが響いていた。











* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 











*卒業式当日*


ー・・・ついに卒業だよぉ・・・」

「そんな事言ったって、高等部も一緒じゃんか」


私は友達と話しながら、体育館の前で喋っていた。
他のクラスの子もザワザワと話している。

左胸には、今日卒業する証のピンクの造花。


「おらー、入場するから、皆並べー」


先生の点呼で、ゾロゾロと並びだす生徒達。



「卒業生の入場です」


司会進行の先生の声で、少しずつ進んでいく。

あぁ、もうこれで卒業なんだ。


・・・・・もう、忍足君との音楽室で練習はできないんだ。

どこか期待してた。全然話せる存在じゃないと思っていたら、相手から話しかけられるし。

心のどこかで、もしかしたらって期待してた。忍足君はかっこいいし、モテる。
いつしか、私も忍足君に魅かれてしまい、忍足君の虜になってしまった。


「卒業生、着席」


忍足君とは同じクラスで・・・しかも卒業式の席では私の前が忍足君。
ずっと後ろ姿が私の視界に入る。

「卒業証書、授与」

「A組、1番。跡部景吾」

「・・・・はい」


ふと顔を上げれば、目の前にいた忍足君はいなかった。あぁ、そっか。
もう、卒業証書か・・・


「2番―――・・・」


順番に、立っては座る生徒達。
跡部君が在校生の横を通っていくと、女子がコソコソと話し始める。

跡部君のファン、多いもんなー・・・とか思いながら横目で見ていると、私が立つ順番がきた。
跡部君が戻り、椅子に座ると私も歩き出す。


「6番、忍足侑士」

「はい」


忍足君は、ゆっくりと歩き出し校長の前でお辞儀をする。
そんな姿さえもかっこいい。

どうしよう。私、好きになってる。


一人一人呼ばれていき、ついに私も点呼される時がきた。
壇上にあがり、先生が呼ぶのを待つ。


番、

「・・・・はい」


ねぇ、どうしよう。
好きになったのが、今気づいたなんて。


「卒業、おめでとう」


「・・・ありがとうございます」


ゆっくりと、壇上を降りる時、ふと忍足君は椅子に座ったまま私と目が合った。

君の事が、好きです。

そんな事言ったらきっと忍足君は困るよね。


ゆっくりと椅子に座る。

忍足君の背中は、凄く広かった。



「以上、380名です」


「続きまして、卒業生による歌です。伴奏者、。指揮者は――・・・」

ピアノの椅子に座り、指揮者を見ようとふと顔を上げた。

そこには、全体練習の時には見えなかったはずの忍足君の後姿が見えた。
もともと、ピアノの前には男子がいた。けれど、知らない人だった。
だけど・・・なんで・・・


そんな事を考えるのもつかの間、指揮者は指揮棒を振り始めた。

これで、最後になる・・・


『白い光の中に―――・・・・』


楽譜は完璧に覚えてる。
私は、みんなの歌声を聞きながら、チラッと指揮者を見ながらピアノに集中した。

なんだろう。


耳を澄ませば・・・・


「みんな過ぎたけれど―――・・・」


忍足君の歌声が聞こえる。

あぁ、そうだ。
私、忍足君が好きなんだ。


歌も終わり、跡部君による答辞も終わり、卒業式が終わった。



、この後の卒業パーティー行く?」

「あ、うん。行くつもりだけど?」


卒業式が無事に終わり、先生に花束を渡したりして校門の前はザワザワしてた。
ふと気づけば、忍足君や跡部君等全学年に人気がある人たちの姿がない。

「ってゆーか、跡部君達見た!?後輩とかタメに超追われてたのっ」

「そうなんだ・・・」

「あぁー・・・私も宍戸君のネクタイ欲しかったなぁー・・・」

「あははっ・・・でも、凄い競争率だろうね・・・」

「だよねー・・・」


友達とくだらない話をしていたら、ふと遠くから声が聞こえた。


ー・・・」

「・・・・へ?」

「ココや、ココ」


ふと振り返ると、茂みに隠れてる忍足君。


「なっ・・・・何やってるの・・・?」

「隠れとんねん・・・ちょっとこっち来て欲しいんやけど」

「あ・・・・うん」


そう言われたものの、茂みの中に入るのは少し困難で。


「大丈夫か?」


そう言ってグイッと腕を引っ張られてなんとか茂みの中に入る事に成功した。
・・・・目の前には、こんな所あったんだ・・・って感じなくらいに一本の桜が咲き誇っていた。


「なんで・・・桜が・・・」

「ここだけ日当たりが良いみたいやねん。ジローが教えてくれたんやけどな。」

「すっごい・・・綺麗・・・・」

「せやろ?」


クスッと笑って、ヒラヒラ舞い散る桜の花びらを掴む忍足君。
ふと気づけば、忍足君のネクタイは、まだある。


「俺の卒業式のイメージにピッタリやわ」


そう言って、嬉しそうに微笑む忍足君を見て、なんだか私も嬉しくなった。


「あ、でも忍足君。好きな人と桜見たかったんじゃない?初めて会った時、言ってたじゃん」

「・・・・せやな」


じぃっと桜を見る忍足君の横顔は、凄く綺麗だった。


「それも、もう叶ってるから、えぇねん」

「・・・・・え?」

と、この桜が見れたから、あの俺のイメージ通りになってんねん」


「何・・・・言って・・・」


「あの時な、俺一目ぼれしてんねん。に」


少し、顔を赤らめて私の目を見る忍足君は凄く綺麗で・・・凄くかっこよくて・・・


「好きや。せやから、俺と付き合って下さい」


「・・・・・私も・・・好き、です」



想い出のあの曲は、いつかきっと君に聞こえるはず。

想いが届くように。















Fin
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人気ランキング1位の忍足でしたー。
忍足は、後4本夢小説書きます。1位は5本ですからね・・・・!
頑張ります(笑)

いかがでしたでしょうか?忍足夢は・・・・。
卒業シーズンなので、卒業ネタになりました!!
THE・ピュア忍足(爆)
でも、やっぱりキスはするんですね(笑)下でキスしてます↓




おまけ↓↓


「忍足君・・・その・・・ネクタイ・・・下さい」

「もともと、にやるつもりやったんやけど」


忍足君はクスッと笑って、ネクタイを外して私の首についていたネクタイを取ってしまった。


「あ・・・・」

「うちの学校、学ランやないからネクタイ取られるのが仕来り(しきたり)やしな。ネクタイ無きゃ、困るから交換な」


そう言って、忍足君がつけていたネクタイを私に結びつけた。
付け終わると、忍足君は私のつけていたネクタイを自分に結びつけた。


「よしっと。ほな、最後の俺のイメージを叶えてもらおか」


ニッコリ微笑んで、私を抱き寄せると、綺麗な顔が近づいてきた。


「なっ・・・・おッ忍足君!?」

「良いから、目瞑っとき」


優しく低く囁かれ、私がおとなしく目を瞑ると、そっと唇に温かいモノが触れた。


「ん・・・・・」

「好き、やで」


桜が舞う中、ぎゅっと抱き寄せられて私達はしばらくそのままでいた。



これぞ本当に終わり。